レギンレイヴは眠らない

コロクワ 男
ルチ 男
レギンレイヴ 女
犬 性別問わず

ーーー

コロクワ「時という概念に、人間は支配されている。そう思った。だから俺はこの黒夜を朝とし白昼を夜とした。
天球儀を傾けて、北極星を見据え、星々を明かりに……野山を、峡谷を、都市を彷徨いた。
……その果てに見つけた女性は酷く、やつれていた。
レギンレイヴ。大空との契約は、彼女を天使にしたてあげる」

ーなんか曲でも流しとこう ー

レギンレイヴ「コロクワ、どこ?」
コロクワ「ここですよ、姫さん」
レギンレイヴ「今日はどこに?」
コロクワ「白熊狩り」
レギンレイヴ「そう」
コロクワ「姫さんは?」
レギンレイヴ「氷の城を造っていたの。見て?綺麗でしょう?」
コロクワ「相も変わらず器用だ。手乗りの城で、こうも豪奢なのは見たことない」
レギンレイヴ「私の、おうち」
コロクワ「こんな所に住んでたのか?」
レギンレイヴ「えぇ、今は溶けて、解けて、海の中」
コロクワ「そうか。太陽のせい?」
レギンレイヴ「……えぇ」
コロクワ「お天道様も厄介だな。姫さん、この白熊の肉、凍らせられるかい?」
レギンレイヴ「勿論」
コロクワ「よし、じゃあこれは明日用に取っておいて…さ、今日は眠らせてもらうよ」
レギンレイヴ「日が昇りそうね……そう、おやすみなさい」
コロクワ「すまないね姫さん」
レギンレイヴ「気にしないで、私は…大丈夫」
ーーー
コロクワ「おはよう姫さん」
レギンレイヴ「ついさっき、日が落ちたわよ。今は、夜」
コロクワ「でも俺は今起きたから」
レギンレイヴ「そうね、それなら、おはよう」
コロクワ「行こうか、そろそろ夜店が開く時間だ」
レギンレイヴ「ねぇ、コロクワ」
コロクワ「何だい?」
レギンレイヴ「真昼の……貴方にとっては夜なのだけれど、その最中に遊んでくれる人が欲しいわ」
コロクワ「…ふーむ……それは無理があるな。俺とその人の活動時間が見合わない」
レギンレイヴ「そう、ね」
コロクワ「まぁ、街をほっつき歩けば犬にでも当たるだろう。暫くはあそこに泊まるし……それじゃあダメか?」
レギンレイヴ「それでいいわ」
コロクワ「ごめんな姫さん」
レギンレイヴ「いいえ、いいの。私が…いけないのだから」
コロクワ「暫く歩くが、身体は平気か?」
レギンレイヴ「えぇ、もう大分形を取り戻してきたから大丈夫」
コロクワ「何よりだ。行くぞ姫さん。今日は日が長いから、すぐに出発しないと間に合わない」
レギンレイヴ「善処するわ」
ーーー
ルチ「よぉ変人。お前の言った通り、真夜中に開けてやったぜ」
コロクワ「世話になる。ほら、約束通り白熊だ」
ルチ「ははっ、こりゃいい。寝ずに待った甲斐があったよ……お?」
コロクワ「なんだ?」
ルチ「後ろの美人さんは、一体全体どちら様?」
コロクワ「あぁ、氷河の隙間で遊んでたお姫様さ」
ルチ「な、何っ?!氷河の魔女か?!」
コロクワ「あんなもんおとぎ話だったよ。人を食うだとか、凍らせて遊ばれるなんて全部嘘っぱちだ、ただの人間と差程変わりないよ」
ルチ「そ、そうだとしても!何でお前はつるんでるんだ!」
コロクワ「美人を放っておけるわけないだろう」
レギンレイヴ「ええと……初めまして」
ルチ「ひっ、喋った?!」
コロクワ「喋るに決まってるだろ。人なんだから」
ルチ「な、なん……あ、あんた……本当に……?!」
レギンレイヴ「氷河の魔女……です」
ルチ「自分で言うのか?!」
レギンレイヴ「それじゃあ、ええと、名前……名前……」
ルチ「自分の名前はわからないってどういうことだ!」
コロクワ「なんかぽけーっとしてんだろ?こりゃほっといたら男が廃るってもんよ」
ルチ「は、はは……流石胸とケツがでかけりゃ何だっていいバカはちげぇな…」
レギンレイヴ「あ……レギン、レイヴ。私の名前は、レギンレイヴ 」
ルチ「レギンレイヴ…?随分と素っ頓狂な名前だな?」
レギンレイヴ「本当……のはず。多分、えぇ、多分」
ルチ「もっと自信を持ってから名乗れ!!」
コロクワ「そうカッカすんなって。ほら、とっとと金寄越せ」
ルチ「……はぁ、お前の相手は本当に疲れる。ほら持ってけ」
コロクワ「ひぃ…ふぅ…みぃ。よし…確かに受け取ったぜ。また何かあったら呼んでくれ」
ルチ「夜中に電話かけると料金が違うことくらい知ってるだろ……!」
コロクワ「いや昼に電話してくれ。今なら姫さんが受けてくれるしな」
ルチ「は?あぁ、そうなのか……それなら遠慮なく」
コロクワ「そういうこった。じゃあな、ルチ」
ルチ「あぁ、またな」
レギンレイヴ「お世話になりました」
ルチ「いえいえ……はぁ、行った。礼儀はしっかりしてるなあの魔女…一体全体どういうこった…何でこうも変なことばっか持ってくんだ…?あーもうやめやめ、寝よう。考えたってラチが明かない…」
ーーー
レギンレイヴ「わんわん」
犬「ワンっ!」
レギンレイヴ「ワンっ」
犬「くぅーん」
レギンレイヴ「くぅーん……」
犬「バウワウ!」
レギンレイヴ「ばう、わう」
犬「わんっ!」
レギンレイヴ「わんっ……ふふ、可愛い」
ルチ「げっ、魔女」
レギンレイヴ「こん、にちは?」
ルチ「……こんにちわ…うわ、なんだ、その犬の量は」
レギンレイヴ「余った白熊のお肉をあげたら、いっぱい集まってきたの。可愛い」
ルチ「上等な肉を犬にやるなんて……」
レギンレイヴ「上等……?」
ルチ「あぁ、アザラシやらアシカやら、そんなもんより数倍美味いし、馬鹿みたいに栄養が詰まってるからな。この南極じゃ白熊肉は高級なんだよ」
レギンレイヴ「高級……高級、って。何?」
ルチ「高値で取引される貴重なもんってことだ」
レギンレイヴ「高値?貴重……?」
ルチ「はぁ…白熊はそもそも数が少ないんだ。だから数が出回らない、でもさっきの理由から喉から手が出るほど欲しがられる。だから高く売れる」
レギンレイヴ「……数が少なくて、大事なものなら、高く売れる?」
ルチ「そうだよ」
レギンレイヴ「じゃあ、この子達は?」
ルチ「犬か?」
レギンレイヴ「えぇ、いっぱいいるでしょう?それなら、安いの?」
ルチ「いいや、犬も高く売れる。なんせ数が必要だし、大事なソリの引手だからな。まぁ、養殖で増やせるから白熊ほど高騰はしないがな」
レギンレイヴ「犬は、食べないの?」
ルチ「俺たち人間にとっちゃ相棒同然だからな…コイツらを食うなんてのは、それこそ死にかけた時だろうさ」
レギンレイヴ「熊は食べて、犬は食べないの……そう」
ルチ「あぁ…氷河の魔女にはわかりにくいか?」
レギンレイヴ「えぇ。とても。ねぇ。
白熊も犬も同じ生き物なのに犬は肉として見ないのはどうして?
白熊の方が力持ちなのにソリの引手に使わないのはどうして?
犬は数が減ればもっと高値で売れるようになるのに殺さないのはどうして?
栄養が沢山の白熊を増やそうとしないのはどうして?」
ルチ「……へ?」
レギンレイヴ「犬はいっぱいいるのに大事な相棒なのよね?
じゃあ、白熊は数が少ないのにお肉としてしか大事にされないのはどうして?
白熊は相棒になれないの?犬だって、白熊だって、人間を殺すことはあるし。仲良くすることもできるわよ?」
ルチ「はぁ……?」
レギンレイヴ「ルチ、さん」
ルチ「は、はい……?!」
レギンレイヴ「高級って、なぁに?」
ルチ「だ、だから……」
レギンレイヴ「人間に必要だったら、高級?価値が、ある?」
ルチ「ぇ…は……」
レギンレイヴ「価値がなくちゃ、大事にされないの?」
ルチ「何、何を……いいた……っ?」
レギンレイヴ「でも、それって可笑しい。価値があるなら、白熊の命だって大事にされていいはず」
ルチ「…な、なんなんだ?!」
レギンレイヴ「なのに、殺す。ごはんとして、殺す。犬も食べれるのに、わざわざ白熊を殺す。殺されることに価値がある。それは、価値が違うってこと?価値、価値って、何かしら?」
ルチ「か、ち……」
レギンレイヴ「難しい。ね、マクベス」
犬「わんっ!」
レギンレイヴ「美味しくなくても、あなたは栄養がありそうね」
犬「わんっ!」
レギンレイヴ「それなら、摂取されてもいい筈」
犬「わんっ!」
レギンレイヴ「でも、価値が違うから食べて貰えない。犬は価値がない、お肉としては、価値がない。でも、相棒だからお名前をあげる。マクベス、貴方はジョージ、貴方はネロ、貴方はジンム、貴方はワシントン。人間にとって、価値のある名前をあげる。私はレギンレイヴ。よろしくね」
犬「バウワウ!!」
レギンレイヴ「……ルチさん?あれ?」
ーーー

コロクワ「おはよう姫さん」
レギンレイヴ「おはよう」
コロクワ「昼は楽しかったかい?」
レギンレイヴ「えぇ、でも少し溶けてしまったの」
コロクワ「今日は腕か……やっぱり昼には向いてないんじゃないか?姫さんの身体」
レギンレイヴ「そうね……向いて、ない。私は、昼に向いてない…犬はご飯に向いてない、白熊は相棒に向いてない」
コロクワ「ん?あ、なんか変なこと覚えてきたな姫さん」
レギンレイヴ「えぇ、少しだけ」
コロクワ「さ、もう1日ここに泊まるが……姫さんは何がしたいことはあるかな?」
レギンレイヴ「ないわ」
コロクワ「そうか……じゃあ、今日は夜市に連れていこう」
レギンレイヴ「夜市。夜の、市場」
コロクワ「きっと姫さんも楽しめるさ!なんてったって燈とうまい飯!沢山の人がいるからな!」
レギンレイヴ「楽しい……?」
コロクワ「あぁ、そりゃ勿論」
レギンレイヴ「たの、しい。」
コロクワ「楽しい、わかるか?」
レギンレイヴ「えぇ、わかる。コロクワといる時の、温かい感覚」
コロクワ「ん?…ははっ…それは照れるな」
レギンレイヴ「コロクワ、楽しいは、価値がある?」
コロクワ「勿論!」
レギンレイヴ「……そう」

ーーー
コロクワ「腕、隠せてよかったな。やっぱりコートは何よりいい防寒具だ」
レギンレイヴ「うん」
コロクワ「どうだ?面白いか?」
レギンレイヴ「人がいっぱい、匂いもいっぱい。皆、楽しそう」
コロクワ「だろ?やっぱり夜はいいもんだ」
レギンレイヴ「夜には、価値がある?」
コロクワ「勿論あるさ」
レギンレイヴ「昼は……?」
コロクワ「勿論、俺が寝る時間だ」
レギンレイヴ「朝は?夕は?」
コロクワ「ん?……んー、そこは微妙かもな。どっちつかずで困る……だが、俺は嫌いじゃない」
レギンレイヴ「……嫌いじゃ、ない」
コロクワ「今日の姫さんは随分と質問ばっかりだな、ははっ、可愛い可愛い」
レギンレイヴ「可愛いは、価値がある?」
コロクワ「……どうしたんだ、姫さん」
レギンレイヴ「私は、レギンレイヴ……価値は、ある?」
コロクワ「姫さん……?」
レギンレイヴ「氷河の魔女に、価値はある?」
コロクワ「姫さん、どうした?」
レギンレイヴ「魔女は私だけ、人はいっぱい。
夜だけなのはコロクワ、皆はほとんど昼……私と一緒にいると、貴方も私も楽しい。
楽しいには価値がある。価値が、ある。
昼、私と一緒にいてくれない貴方は……楽しくない。
楽しい?楽しくない、楽しい、楽しくない。美味しい、美味しくない。誰が決める?人間?コロクワ?氷河の魔女?レギンレイヴ?」
コロクワ「姫さん、落ち着けって」
レギンレイヴ「昼に向いてない私は、魔女は、人に必要とされない。
溶けて解けた城は、住めないから、私に……必要ない。
コロクワは夜、私は……夜に向いている。私には、価値がある。
ルチさんは、私を怖がった。ルチさんにとって、私はいらない。
コロクワは、人間。
私は、魔女」
コロクワ「ルチさん?……姫さん、昼間に、あれに何を吹き込まれたんだ」
レギンレイヴ「高級と価値と、シロクマと犬と……お肉と相棒……多いと少ない…… 」
コロクワ「よくわからんが小難しい話だろうな……ったく、もっと気楽に生きようぜ、姫さん」
レギンレイヴ「気楽……気楽……」
ルチ「見つけたぞ!アレが氷河の魔女だ!人の心をわからない、悪辣な化け物だ!殺せ!殺せ!!焼き尽くせ!!!」
コロクワ「ルチ?!それに、お前ら、それは一体!!」
ルチ「コロクワ!!それを殺せ!!!」
コロクワ「何を言ってやがる?!」
レギンレイヴ「殺されるなら、私は……食べられる?」
ルチ「食べるわけないだろ!!魔女は魔女だ!!人間にとって危ないものでしかない!!」
レギンレイヴ「食べないのに、殺される?私は、人間にとって、どんな価値?」
コロクワ「姫さん!考えるのはあとだ!!逃げるぞ!!」
レギンレイヴ「えぇ」
ルチ「逃がすな!殺せ!!あの女は人間の敵だ!!殺せ!!殺せ!!」
レギンレイヴ「私は、仲良くしたい」
ルチ「無理に決まってるだろ!!!忌まわしい魔女め!!死ねっ!!」
コロクワ「銃?!待て、ルチ!!」
ー発砲ー
レギンレイヴ「……痛い」
ルチ「ドタマぶち抜いてんのに……効きやしねぇ!!?」
コロクワ「姫さん!!」
ルチ「化け物め!!出ていけ!!この街から出ていけ!!!」
レギンレイヴ「痛い、痛い……痛いのは、嫌。嫌なものに、価値はない。銃は、要らない」
ルチ「ヒィイイイ?!銃が、こ、氷に……何を」
コロクワ「姫、さん……?」
レギンレイヴ「痛いことする、ルチさんも要らない」
ルチ「ァッ……アァっ?!凍る、足が、足が動かない……溶かせ!!おいお前!!その火を寄越せ!!……は、ぁ……は、温かい」
レギンレイヴ「私が溶ける……あぁ、火も、要らない」
コロクワ「姫さん!止まれ!!」
ルチ「町中のカンテラが……っ?!」
レギンレイヴ「要らない、要らない、価値がない」
ルチ「…ィイィイイイッ!!!!街に厄災を呼び込みやがって!!コロクワ!!!お前、ぉまぇ、が…ッ…おま、え…が……ッ」
コロクワ「ルチ!!…姫さん、頼む、止まれ、止まってくれ」
レギンレイヴ「……ダメ?」
コロクワ「ダメだ!!」
レギンレイヴ「貴方が、そういうのなら」
ルチ「……ハッ……あぁ、はぁ………」
コロクワ「姫さん、なぁ」
レギンレイヴ「昼も、要らない」
コロクワ「要らない要らないって、さっきからどうしたんだよ……」
レギンレイヴ「コロクワ」
コロクワ「……何だい?」
レギンレイヴ「貴方は、昼に眠り、夜に働く。それは、時間という概念への反抗だと…初めて会った時、そう言ったわね」
コロクワ「……そうだ」
レギンレイヴ「貴方は夕焼けのその一時に目覚め、朝焼けの始まりに眠る……それは、誰よりも、えぇ、誰よりも。時間に、縛られている」
コロクワ「……そう、かもな」
レギンレイヴ「宵闇におはようと嘯いて、暁におやすみと吐きつける。夜には働く価値がある、昼には眠る価値があると言う。でも、私には昼に価値がない。貴方は眠る、私はまた一人、1人は……もう、嫌。嫌、嫌、嫌?嫌って、どうして?昼は、コロクワには必要……」
ルチ「何を一人で喋っているんだ?!……出ていけ!!魔女ッ!!」
ー発砲ー
レギンレイヴ「痛い……痛いのに。コロクワは、凍らせるなって……あぁ、わからない。わからない!!人間が!あなた達が!コロクワがわからない!!この感情がわからない。必要、不必要、高級……低級?……価値、価値、価値……私は、人にとって価値はない。でも、あぁ、でも!!」
ルチ「腕が……ない……ッ?!」
レギンレイヴ「……私は、魔女。氷河の魔女。一人で、生きれ……あぁ……あぁ……」
コロクワ「姫さん、体が……溶けて、姫さん!!!」
レギンレイヴ「…コロクワ」
コロクワ「何だ?!どうした!?!暑いか!!早く寒いところに……っ!!」
レギンレイヴ「えぇ……帰らなくちゃ」
ーーー
コロクワ「もう、大丈夫か?」
レギンレイヴ「えぇ、平気」
コロクワ「そうか…良かった」
レギンレイヴ「えぇ、良かった」
コロクワ「姫さん。ものの価値、なんてのはな」
レギンレイヴ「えぇ、価値、わかったわ」
コロクワ「わかった?」
レギンレイヴ「えぇ、とても、とてもよくわかった。誰かに必要で、誰かには不必要。必要な人が多くて数が少ないほど価値がある。私は一人、でも誰にも必要とされない、だから、価値が……ない」
コロクワ「姫さん、そうじゃないんだよ。人同士、は」
レギンレイヴ「……?」
コロクワ「必要か、不必要か……そんなことじゃないんだ。ヒトの…貴女としての価値は」
レギンレイヴ「どういうことかしら?」
コロクワ「貴女は、俺のかけがえのない存在だ」
レギンレイヴ「……?」
コロクワ「俺と一緒なら楽しいだろう?」
レギンレイヴ「起きてる貴方と、一緒は楽しい」
コロクワ「……寝ている俺は?」
レギンレイヴ「楽しくないけど、寝顔は……そう、きっと、貴方の言う可愛い。可愛い、そう。」
コロクワ「可愛いって……はぁ、まぁいいや。要は、貴女は俺に価値があって、俺は貴女にとって価値がある……どうだ?わかるか?」
レギンレイヴ「他の人には?」
コロクワ「そんなの関係ない。人間どうし、ヒトどうしなら、俺らは互いに必要……それが俺らにとっての俺らの価値だ」
レギンレイヴ「……コロクワ」
コロクワ「なんだい、姫さん」
レギンレイヴ「胸が、苦しい。熱くて、溶けそう」
コロクワ「なっ?!溶けるなよ?!今いい話してんだから!!!」
レギンレイヴ「コロクワ、ありがとう。私、今、あなた達がわかったわ」
コロクワ「姫さん?!これ以上寒いところはないぞ!?……クッソ!!姫さん!!」
レギンレイヴ「行かなきゃ、あそこに。忘れなきゃ、貴方のこと」
コロクワ「ハァッ?!」
レギンレイヴ「じゃないと、溶けちゃう。消えてしまう」
コロクワ「どういうことだ?!」
レギンレイヴ「わかってしまったの。ごめんなさい、コロクワ、私は分かったことを貴方に言えない。言ったらきっと、解けてしまう。あぁ、寂しい……寂し……魔女になんて……ならなければ……よか……」
コロクワ「ウワッ?!顔が……ッ?!」
レギンレイヴ「……コ、ク……ァ」
コロクワ「ヒッ、なっ、冷たっ?!あっ、ちょ……溶けるな!!溶けるな!!」
レギンレイヴ「ぁ…」
コロクワ「…姫、さん……姫さん?……おい、なんで、水なんか……何がわかったんだよッ!?姫さん、姫さん!!」
ーーー
レギンレイヴ「ここは……?。氷河……?あぁ!あぁ!!溶けてしまった!!!
流れ巡り、廻り廻って、ここにカエって来てしまった。
あぁ、あの人の名前が思い出せない。忌々しい太陽のようで、夜に生きるあの人の名が思い出せない。愛らしく眠る人間が思い出せない。幼稚で、優しい、愚かな彼の名が!顔が!!別れ際が!!!
……あぁ、そうだ。あの人は、昼は眠って、夜は働く、それなら私は必要なんだ。
あぁ、熱い。胸が火照って、蕩けてしまう。体が、熱い、私は……私は、この熱を凍らせなければ!でないとまた蕩けてしまう!!
あぁ、もどかしい彼を待てど彼と暮らせど、分かっては生けない。
あぁ、何で私は、こんな契約を……夜にだけ、生きれるようにと願ったのだろう」
ーーー

Coord:Dimension--No.000*CASCADES*

次元座標 観測ナンバー000【カスクェイド】 観測者:咎持ちのハラバイ 管理プログラム:Unveil BAllad Koooky Unit 非言語化領域コンヴェーション 反実在領域OPデバイス

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